2020年6月29日月曜日

m-2:ヒント2-c:お絵描きから使える素材へ

mission-2:ヒント2-a:観察スケッチ」で、スケッチ方法のヒントを紹介しましたが、ここでもう少し詳しく説明しようと思います。

◉観察スケッチの入り口

昨年度までの教室での授業では、フィールドワークに出る前に、以下のような練習をしてもらっていました。これは、道具を持ち歩いていれば、いつでもどこでも実践できます。ぜひ、意識的に試してみてください。

さて、では具体的に、どれくらい描けばいいのか?
教室では、他の人の表現を見ることがこの問いのヒントになるのですが、リモートでの孤独な活動では、なかなかわかりにくいですね。
トーヤ・ヘンソン氏の表現を題材に、「これくらい描けばいいかな」というレベルを感じてもらえればと思います。ではトーヤさん、お願いします。

◉実践例

トーヤです。洞爺湖湖畔を散策しながら、スケッチしてみました(2020/06/29)。目的はうまく描くことではなく、気になったものを観察して自分の体内に染み込ませることです。

スケッチの左上は彫刻作品の輪郭だけをほぼ一筆書きでなぞったもの。右上は、影になっている部分だけを描いたもの。左下は、光を反射しているハイライト部分だけを線で辿ったもの。右下は一応写実的に速攻で描いてみました。輪郭、影、ハイライトを組み合わせれば写実っぽい表現に近づきます。下手で、いいんです。

輪郭が曖昧な木や、ちょっと遠くの風景(様々なものがミックスされたもの)はどうしましょう?

だいじょうぶ。先程の例と同じように、輪郭を一筆書きで描けばこのとおり。葉っぱのつき方や、気になるディテールは補足的にざっくり描いておけばあとで色々思い出すことができます。足元の石ころも、ササッと描いてみるだけで、愛おしい存在になります。

家具や標識などの人工物は?

実は加工されたものは、(先程の彫刻もそうですが)表現者の意図がかたちから滲み出ているので、描きやすいんです。輪郭も陰影も、そのものの特徴をはっきりと表す方向にデザインされていることが多いのです。これは、自分で何かの形を表現するときのヒントにもなりますね。

動き回る生き物は?景色や状況など、情報量が多すぎる場合は?

一度に全部描かなくてもいいんです。気になったものを、勢いで、配置も気にしないで、まずは描き殴ってみましょう。生き物って、角度やポーズによって、すごく面白い形に見えることはありますよね。カッと覚えて、さっと描く。短期記憶の力を鍛えると、日常のいろいろなことで役に立ちますよ。
ちなみに、絵にしなくても記録はできます。その方法が「図解」です。
ほら、こんな表現でもわかるでしょ。え?私(描いた本人)にはわかるんです。
個別のスケッチとこのような全体像の説明を残しておけば、これを見返すたびに、「あの日、あの場所、あの場面」をふわっと思い起こすことができます。

※スケッチの上に乗っているのは「ゼニガメラさん」です。撮影(スキャン)時に紙が浮かないように、ペーパウェイトとして活躍してもらいました。

◉まとめると

・輪郭線だけ描く
複雑なものも、単純なものも、まずは輪郭線だけを描いてみましょう。
一筆書きで一気に描くのがポイントです。
最初は、描き出しの部分と描き終わる部分が一致しない、というようなことも起きますがそれもよし。

慣れてくると、手元を見ずに、対象だけを見ながらでもある程度、輪郭をなぞることができるようになりますよ。

・光の向きに注目(影の部分/ハイライトの部分)
物の形状や立体感を表現するために、影やハイライトを書き込む方法は、マンガやアニメでもおなじみの方法ですね。さらに突き詰めて、影やハイライトだけの描画でも、観察結果を表現で残すことができます。

・文字に頼る
観察スケッチを「図」と考えるなら、ことばによる表現も広い意味ではスケッチと呼べるのではないでしょうか。絵で描ききれない情報は文字で。例えば、色、材質、表面のテクスチャ、破損・欠損などの状態・・・など。

自分で試しながら、自分のために使えるスケッチを身に付けるとよいですよ。